傳田精一先生ありがとうございました。
セイコーエプソン株式会社 間ヶ部 明
小生と傳田精一先生とのつながりは、長野実装フォーラムのルーツである“半導体・実装技術研究会”が活動を開始して間もなくの頃、先生からのお誘いを受けて参加したことが始まりであるが、当時は、長野県の地元企業を中心とした勉強会の様相であったと記憶している。上田の長野県工科短大の教室で、机をロの字型に並べて、出席者同士が顔を突き合わせながらの、アットホーム且つ自由な雰囲気で議論がされていたことを懐かしく感じる。当時の実装技術を取り巻く環境は、新しい半導体パッケージとしてBGA/CSPが定着し始め、ウエハレベルPKG、三次元積層や埋め込み型PKGなどの新技術も立ち上がってきた時期であり、また一方で回路基板実装の分野では、鉛フリーはんだへの切り替えも加速し始めるなど、時代の節目となる大きな技術革新の話題が多かったと思う。そういうテーマを一つずつ丁寧に掘り下げる傳田先生の講義、他者発表に対する質問やコメント(時には鋭い突っ込み)は、出席者全員の学び取ろうという意欲掲揚、理解度向上を導くものであり、参加各人、各社の今日の成長につながるものであったと改めて思い起こしており、傳田先生には感謝申し上げる次第である。
また、当会のもう一方の大きなイベントであったシンポジウム形式の公開技術講演会は、国内有数の半導体・実装技術の権威の方々のご協力により、今の長野実装フォーラムへと連続的に進化し、その時代折々の旬なテーマを取り上げる新鮮な企画により、盛況に発展してきた。特に、毎回、コーディネーターが進行役を務め、議論を盛り上げる役回りをされる仕組みなどは、他の学会ではあまり見られない出色な特徴であり、こちらも傳田先生の経験豊富な高い見識や、お年を重ねられても衰えを知らない知的探求心によるリーダーシップによるところが大きかったと感じている。
以上、述べたような質の高い活動が、四半世紀の長きに亘り、地方都市で継続的に行われている事例は、他に類を見ないものであり、これの礎を築かれた傳田先生のご尽力に深く敬意を表するとともに、心よりご冥福をお祈りする次第である。
今後も、エレクトロニクス実装技術を取り巻く環境は激動していくことが予想されるが、長野実装フォーラムが実装技術の進化の一翼を担いながら、参加者共々ますます発展して行くことが、傳田先生への供養となるものと思っている。
写真は、公開研究会における傳田先生とのツーショット
間ケ部 明(まかべ あきら)
セイコーエプソン㈱において、実装技術開発、各種製品開発、MEMS・オプトデバイス・材料等の研究開発統括職を経て、現在、同社 技術開発本部にて、産官学連携コーディネーターを担当している。
2023年8月からは、東北大学 グリーンクロステック研究センター特任教授を兼務して、サスティナブル材料の共創研究を推進している。
本会副代表理事、日本実装技術振興協会理事、信州産学みらい共創会理事。